ピロリ菌、福岡市ならどこで治療すればいい?おすすめの医療機関と治療の流れーりょうすけ内科外科コラム

ピロリ菌という菌が胃がんの原因の一つだと言われているのはご存じでしょうか。

胃がんは、日本人のがんによる死亡率第1位という不名誉な時期がありました。しかし、最近は検査方法や治療精度が向上し、死亡者は減少しています。

2021年の国立がんセンターの統計では、胃がんによる死亡率は男性では第3位、女性は第5位となっています。今回は、胃がんの大きな原因となるピロリ菌について解説し、胃がんリスクを減少させるための、ピロリ菌洗浄についても触れていきます。

1.ピロリ菌とは

ピロリ菌は、正式名称をヘリコバクター・ピロリと言います。胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。100年ほど前から、胃には細菌がいるのでは?という説が唱えられてきましたが、胃酸により細菌は生きていられないというのが定説でした。1979年にオーストラリアの2人の医師がピロリ菌を発見し、その後の研究からピロリ菌は胃炎や胃・十二指腸の潰瘍、胃がんなどの病気の原因となることがわかってきました。実は、子どもの頃に飲食物を通じて感染し、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。なんと日本人の40歳以上の7割の人が保菌者と考えられています。

日本や韓国などアジア地域では、欧米と比較して、胃がんの発症率が数倍高いと言われています。その胃がんの原因の約90%以上を占めているのがピロリ菌です。

残念なことに、日本人をはじめとしてアジア圏のピロリ菌は、胃がんを引き起こしやすく、欧米のピロリ菌は、十二指腸潰瘍を発生させやすい型であるとわかってきました。

2.ピロリ菌による胃がんのメカニズム

ピロリ菌が胃がんピロリ菌が胃がんを引き起こすメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

・慢性的な胃粘膜の炎症

ピロリ菌は胃粘膜に感染すると、胃全体が赤くなり、ヒダの肥厚化が起こります。同時に、粘膜が薄くなり委縮した状態になります。これを委縮性胃炎と言います。

この委縮性胃炎=慢性的な炎症を引き起こし、胃粘膜の細胞を傷つけ、DNA損傷を蓄積させ、最終的に癌化につながる可能性があるのです。

・CagAタンパク質

ピロリ菌の持つCagAタンパク質は、胃粘膜細胞の増殖やシグナル伝達を異常化させ、癌化を促進する可能性があります。

・腸内環境の変化

ピロリ菌感染は、胃腸内細菌叢のバランスを変化させ、悪玉菌が増殖しやすくなる可能性があります。この腸内環境の変化も、胃がんの発症リスクを高める要因と考えられています。

・遺伝的要因

ピロリ菌感染による胃がんの発症には、遺伝的要因も影響している可能性があります。

上記に加え、ピロリ菌が胃酸の分泌を抑制したり、免疫機能を低下させたりすることも、胃がんの発症リスクを高める要因と考えられています。

ただし、ピロリ菌が直接胃がんを引き起こすのではなく、塩分の多い食事や喫煙、刺激の強い食べ物、ストレス、遺伝などが重なり胃がんリスクが高まるのです。

また、ピロリ菌は、胃がん以外にも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫などの病気の原因となることが分かっています。そのため、ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を受けることが推奨されています。

3・ピロリ菌の除菌

多くの日本人の胃の中で、共生しているピロリ菌ですが、加齢や生活習慣、遺伝リスクなどが加わると、胃がんを引き起こす可能性が高まります。40歳以上の方は一度ピロリ菌の有無を検査し、除菌をされることをおすすめします。

まず、内視鏡検査により胃の萎縮の有無を確認し、ピロリ菌の感染の有無を検査します。この検査は便、尿、血液、呼気などで調べることができます。ピロリ菌がいた場合は、1週間程度、服薬するだけです。90%以上の確率で除菌できることが確認されています。

福岡には内視鏡検査、除菌のできる医療機関はたくさんあります。福岡市にお住いの方であれば、市の補助により胃がん検診の費用をおさえて行えますので活用されてください。検査結果が判明するまでは4~5日間必要です。ピロリ菌が陽性であれば、1週間薬を内服することで、ピロリ菌を除菌することができます。また、服薬中の医師の指示、例えば禁酒などきちんと守りましょう。

一旦、除菌が成功した後も、定期的な内視鏡検査をおすすめします。実は、除菌の効果は、胃がんリスクの予防であり、除菌以前の感染期間に起こった炎症や委縮がある場合は胃がんのリスクは残ります。ただし、早期発見であれば内視鏡による治療のみで終わることも多いのです。

多くの日本人にはピロリ菌による胃炎や胃がんのリスクが潜んでいます。ただ怖がるのではなく、除菌をすればほとんどのピロリ菌は死滅し、健康を保てることをお伝えしました。まずは、内視鏡検査を受けて、ご自身の胃の中をしっかり観察することが、あなたの健康を守ることになります。